不調または大乱調

 改行が利かなくなった。とうとう駄目になったか。走らなきゃ。ポメラは高いのかな。ビックカメラを目指して走って行くと職場に着いた。グラスを持ち上げようとすると、腕が思うように上がらない。


「それもう病院行った方がいいですよ」


 今ちゃんが言った。病院はちょうど真下だった。長々とした階段を下りて行く。ドアを開けると先生が待っていた。


「開いてごらんなさい」


 シャツのボタンを外すと体の中が露わになった。配線が絡まりぐちゃぐちゃになっているようだ。


「先生、これ縫うのですか?」


 看護師が聞いた。医者は糸が足りなくなると言って顔をしかめた。


「のり持ってきて!」


 荒療治または藪医者かこいつ。

パスタのためのトング

 パスタのためのトング。
 パスタの他には絶対に使用いたしません。ここにサインを? もしも使ったら? その時はその腕をいただきます? 嫌だそんなサインなんか絶対にしないぞ。しないと言ってるだろう。何をするんだ? 放せ! 誰がいると言った? やめろ! 指が、指が千切れる……


 ああ、夢か。気味の悪い奴らだった。
 アルデンテになった僕の上に、トングが迫ってくる。
(もうすぐ僕はすくわれるだろう)
 日常を取り戻せて、僕はもう落ち着いている。
 全く、酷い夢だった。
 人間になっているなんて。